こいのぼり
鯉のぼり
文部省唱歌
山梨県忍野村
甍(いらか)の波と 雲の波
重なる波の 中空(なかぞら)を
橘(たちばな)かおる 朝風(あさかぜ)に
高く泳ぐや 鯉のぼり
開ける広き その口に
舟をも呑(の)まん 様(さま)見えて
ゆたかに振るう 尾ひれには
物に動ぜぬ 姿あり
百瀬(ももせ)の滝を 登りなば
たちまち竜(りゅう)に なりぬべき
わが身に似よや 男子(おのこご)と
空に躍(おど)るや 鯉のぼり
(大正2年)
荒城の月
作詞 : 土井晩翠 / 作曲 : 滝廉太郎
山形県上山市
春高楼(こうろう)の 花の宴(えん)
巡(めぐ)る盃 かげさして
千代の松が枝 わけ出でし
昔の光 いまいずこ
秋陣営(じんえい)の 霜(しも)の色
鳴きゆく雁(かり)の 数見せて
植うる剣(つるぎ)に 照りそいし
昔の光 いまいずこ
今荒城の 夜半の月
かわらぬ光 たがためぞ
垣にのこるは ただかつら
松に歌(うと)うは ただ嵐
天井(てんじょう)影は 替わらねど
栄枯(えいこ)は移る 世の姿
写さんとてか 今もなお
嗚呼(ああ)荒城の 夜半の月
(明治34年)
小馬(こうま)
文部省唱歌
熊本県阿蘇市
はいしい はいしい
歩(あゆ)めよ 小馬
山でも坂でも ずんずん歩め
お前が進めば わたしも進む
歩めよ 歩めよ 足音たかく
ぱかぱか ぱかぱか
走れよ 小馬
けれども急いで つまづくまいぞ
お前が転(ころ)べば わたしも転ぶ
走れよ 走れよ 転ばぬように
(明治43年)
こがね虫
作詞 : 野口雨情 / 作曲 : 中山晋平
山梨県富士河口湖町
こがね虫は 金持ちだ
金蔵(かねぐら)建てた
蔵(くら)建てた
飴(あめ)屋で水飴
買って来た
こがね虫は 金持ちだ
金蔵(かねぐら)建てた
蔵建てた
子供に水飴
なめさせた
(大正12年)
故郷の空
作詞 : 大和田建樹 / スコットランド民謡
福島県福島市
夕空晴れて 秋風吹き
月影落ちて 鈴虫鳴く
思えば遠し 故郷の空
ああ わが父母
いかにおわす
澄みゆく水に 秋萩(はぎ)垂(た)れ
玉なす露(つゆ)は すすきに満(み)つ
思えば似たり 故郷の野辺(のべ)
ああ わが兄弟(はらから)
たれと遊ぶ
(明治21年)
故郷の廃家
作詞 : 犬童球渓 / 作曲 : ヘイス
福島県伊達市
幾年(いくとせ)ふるさと 来てみれば
咲く花 鳴く鳥 そよぐ風
門辺(かどべ)の小川の ささやきも
なれにし昔に 変らねど
荒れたる 我が家に
住む人 絶えてなく
昔を語るか そよぐ風
昔をうつすか 澄める水
朝夕かたみに 手をとりて
遊びし友人(ともびと) いまいずこ
さびしき 故郷(ふるさと)や
さびしき 我が家や
(明治40年)
故郷を離るる歌
作詞 : 吉丸一昌 / ドイツ民謡
山形県飯豊町
園の小百合なでしこ 垣根の千草
今日は汝(なれ)を眺(なが)むる
最後(おわり)の日なり
思えば涙 膝(ひざ)をひたす
さらば故郷(ふるさと)
さらば故郷 さらば故郷 故郷さらば
さらば故郷 さらば故郷 故郷さらば
つくし摘みし岡辺よ 社(やしろ)の森よ
小鮒(こぶな)釣りし小川よ
柳の土手よ
別るる我を 憐(あわ)れと見よ
さらば故郷
さらば故郷 さらば故郷 故郷さらば
さらば故郷 さらば故郷 故郷さらば
ここに立て さらばと 別れを告げん
山の蔭(かげ)の故郷 静かに眠れ
夕日は落ちて 黄昏(たそがれ)たり
さらば故郷
さらば故郷 さらば故郷 故郷さらば
さらば故郷 さらば故郷 故郷さらば
(大正2年)
この道
作詞 : 北原白秋 / 作曲 : 山田耕筰
山形県庄内町
この道は いつか来た道
ああ そうだよ
あかしやの 花が咲いてる
あの丘は いつか見た丘
ああ そうだよ
ほら 白い時計台だよ
この道は いつか来た道
ああ そうだよ
お母さまと 馬車で行ったよ
あの雲は いつか見た雲
ああ そうだよ
山査子(さんざし)の 枝も垂(た)れてる
(大正15年)
ゴンドラの唄
作詞 : 吉井 勇 / 作曲 : 中山 晋平
米国 カウアイ島
いのち短し 恋せよ少女(おとめ)
朱(あか)き唇 あせぬ間に
熱き血潮(ちしお)の 冷えぬ間に
明日の月日の ないものを
いのち短し 恋せよ少女
いざ手を取りて 彼(か)の舟に
いざ燃ゆる頬(ほ)を 君が頬に
ここには誰(た)れも 来ぬものを
いのち短し 恋せよ少女
波にただよう 舟の様(よ)に
君が柔手(やわて)を わが肩に
ここには人目 ないものを
いのち短し 恋せよ少女
黒髪の色 あせぬ間に
心のほのお 消えぬ間に
今日はふたたび 来ぬものを
(大正4年)