箱根八里
作詞 : 鳥居 忱 / 作曲 : 滝 廉太郎
神奈川県箱根町
箱根の山は 天下の険(けん)
函谷関(かんこくかん)も 物ならず
万丈(ばんじょう)の山 千仞(せんじん)の谷
前に聳(そび)え 後(しりえ)に支(さそ)う
雲は山をめぐり 霧は谷をとざす
昼なお闇(くら)き 杉の並木
羊腸(ようちょう)の 小径(しょうけい)は
苔(こけ)滑(なめら)か
一夫関(いっぷかん)に当るや
万夫(ばんぷ)も開くなし
天下に旅する 剛毅(ごうき)の武士(もののふ)
大刀(だいとう)腰に 足駄(あしだ)がけ
八里の岩根(いわね) 踏み鳴らす
斯(か)くこそありしか
往時(おうじ)の武士(もののふ)
(明治34年)
初恋
はと
はなさかじじい
作詞 : 石原和三郎 / 作曲 : 田村虎蔵
群馬県沼田市
うらの畑で ポチがなく
しょうじきじいさん 掘(ほ)ったれば
大ばん小ばんが ザクザク ザクザク
いじわるじいさん ポチかりて
うらの畑を 掘ったれば
かわらや貝がら ガラガラ ガラガラ
しょうじきじいさん うすほって
それで餅(もち)を ついたれば
またぞろ小判が ザクザク ザクザク
いじわるじいさん うす借りて
それで餅を ついたれば
またぞろ貝がら ガラガラ ガラガラ
しょうじきじいさん 灰(はい)まけば
花は咲いた 枯れ枝に
ほうびは沢山(たくさん) お蔵(くら)に いっぱい
いじわるじいさん 灰まけば
殿(との)さまの目に それが入(い)り
とうとう牢屋(ろうや)に つながれました
(明治34年)
埴生の宿
作詞 : 里見 義 / 作曲 : ビショップ
米国フェアバンクス
埴生(はにゅう)の宿も わが宿
玉の装(よそお)い 羨(うらや)まじ
のどかなりや 春の空
花はあるじ 鳥は友
おお わが宿
楽しとも たのもしや
書(ふみ)読む窓も わが窓
瑠璃(るり)の床も 羨(うらや)まじ
清らなりや 秋の夜半(よわ)
月はあるじ むしは友
おお わが窓よ
楽しとも たのもしや
(明治22年)
浜千鳥
作詞 : 鹿島鳴秋 / 作曲 : 弘田龍太郎
岩手県宮古市
青い月夜の 浜辺には
親を探して 鳴(な)く鳥が
波の国から 生まれでる
濡(ぬ)れた翼(つばさ)の 銀の色
夜鳴く鳥の 悲しさは
親をたずねて 海こえて
月夜の国へ 消えてゆく
銀の翼の 浜千鳥(はまちどり)
(大正8年)
浜辺の歌
作詞 : 林 古渓 / 作曲 : 成田為三
山形県鶴岡市
あした浜辺を さ迷えば
昔のことぞ 忍(しの)ばるる
風の音よ 雲のさまよ
寄する波も 貝の色も
ゆうべ浜辺を 回(もとお)れば
昔の人ぞ 忍ばるる
寄する波よ 返(かえ)す波よ
月の色も 星の影(かげ)も
(大正7年)
春が来た
作詞 : 高野辰之 / 作曲 : 岡野貞一
東京都青梅市
春が来た 春が来た
どこに来た
山に来た 里に来た
野にも来た
花が咲く 花が咲く
どこに咲く
山に咲く 里に咲く
野にも咲く
鳥が鳴く 鳥が鳴く
どこで鳴く
山で鳴く 里で鳴く
野でも鳴く
(明治43年)
春の小川
作詞 : 高野辰之 / 作曲 : 岡野貞一
山梨県忍野村
春の小川は さらさら流(なが)る
岸のすみれや れんげの花に
匂(にお)い めでたく 色うつくしく
咲けよ咲けよと ささやく如(ごと)し
春の小川は さらさら流る
蝦(えび)や めだかや
小鮒(こぶな)の群(むれ)に
今日も一日 ひなたに出(い)でて
遊べ遊べと ささやく如(ごと)く
(大正元年)
春よ来い
作詞 : 相馬御風 / 作曲 : 弘田龍太郎
福島県福島市
春よ来い 早く来い
あるきはじめた みいちゃんが
赤い鼻緒(はなお)の じょじょはいて
おんもへ出たいと 待っている
春よ来い 早く来い
おうちの前の 桃の木の
蕾(つぼみ)もみんな ふくらんで
はよ咲きたいと 待っている
(大正12年)